教員紹介

井上 直己(いのうえ なおみ)

プロフィール

米国アイオワ州生まれ。3歳で帰国し、神奈川で育つ。東京大学法学部卒。環境政策修士(Mphil in Environmental Policy; 英国ケンブリッジ大学)、環境開発修士(MA in Environment, Development and Policy; 英国サセックス大学)。2001年、環境省に入省。地球温暖化対策の計画立案、環境税の制度案の立案・検討、自動車排ガス(NOx/PM)規制法改正の起草、生物多様性保全活動促進法の起草、秘書官として環境大臣政務官(衆議院議員)へのサポート、環境教育推進室におけるESD(持続可能な開発のための教育)の推進、在中国日本大使館書記官としての日中環境協力の側面支援、風力発電や太陽光発電に係る環境影響の評価、気候変動への“適応”を促進するための法案(気候変動適応法案)の起草等を担当。
特に、在中国日本大使館として北京に駐在をしていた2013~2017年の3年半においては、深刻な大気汚染に見舞われた中国の環境改善に協力をするため、中国の環境問題・政策の分析、協力プロジェクトの企画・立案に携わるとともに、日本の環境政策・制度について、全国人民代表大会をはじめとした中国の中央政府や地方政府、大学等で講演を重ね、中国メディアへの発信も行った。

1.研究紹介

今でこそ、日本は美しい青空と清浄な水の恵みを享受しているが、かつては深刻な公害に見舞われ、経済発展が大優先で環境は後回し、という声が圧倒的多数であった時代の中で、多大なる犠牲を払いながら、少しずつ環境を改善していった経緯がある。現在積み上げられている日本の環境政策は、国内の様々な利害関係者との衝突、折衝、調整を経て、一歩一歩進められたものであり、その歴史・経験から学ぶべきこと(見習ってはいけないことも含め)は数多い。
当研究室では、環境行政・環境政策の形成に係る利害関係者との調整、合意形成、政策手法の選択、国際的課題に関する対応、国際協力プロジェクト作りについて、あるべき姿を模索する。

2.特色

日本や中国における実務経験を踏まえ、具体的事例を取り上げて議論を行う。また、中国では深刻な大気汚染への対応が急務である一方で、炭素排出量取引制度は日米に先行して導入しつつあり、政策形成のダイナミズムが見られる。こうした世界的な環境政策の動向や「政策競争」についても検討していく。

3.何が学べるか

環境政策の様々な手法とそれを活用する具体的事案について、エピソードを交えながら、分かりやすく紹介していく。対策を採るターゲットとなるべき環境問題の実態を明らかにし、これに対応するための政策手法・運用方法を選択すること、そしてそれらに関する多様な利害関係者の立場の違いを明らかにし、それらの関係者の合意を如何に形成してくか、そのあり方を考えていく。

4.ゼミの紹介

環境行政・環境政策に関する基礎的な知識を共有するとともに、学生の関心・希望に応じてトピックを選び、具体例を交えてディスカッションを進めていく。今まさに政府が知恵を絞っている「旬」の政策議論について関心を促し、その議論の本質を理解するべく討議を進めるとともに、パブリックコメントへの参加など、学生自身の参画を通じて、多様な選択肢の中から合意づくりを進めていくためのあり方を追求する。学生の主体性を重視し、テーマ、外部講師、現地調査などを選択し、学生と共に作り上げていきたい。