教員紹介

平尾 桂子

プロフィール

上智大学大学院国際関係論専攻修了(国際学修士)、University of Notre Dame社会学博士修了(社会学Ph.D.)1999年上智大学文学部助教授、2006年同教授。2009年から現職。その間ミシガン大学客員研究員、ハーバード大学客員研究員など。主な著書に、『「見えざる手」と「見えざる心」−ワーク・アンド・ファミリーのゆくえ』(上智大学出版 2015)、Women's Working Lives in East Asia. Stanford University Press. 2001(共著)、『女性の就業と子育て-母親たちの階層戦略-』勁草書房 2004年(共著)、Working and Mothering: Asian Women Negotiating Work Challenges and Family Commitment. Singapore University Press. 2007(共著)、Changing Families in Northeast Asia. Sophia University Press. 2012(共著)等。

1.研究紹介

専門は社会学。家族と社会がサステナブルであるためには何が必要かを考えることがテーマです。ジェンダーと環境、気候変動に関するメディア分析、環境問題としての人口問題、異世代間関係などに取り組んでいます。
「家族」(世帯)は社会の最小単位であるとともに、人間の「次世代」(子ども)を生み出す唯一のしくみです。実は、少子高齢化問題は環境問題と構造がよく似ています。たとえば、企業の社会的責任。公共財である自然環境に対する企業の責任が問われていますが、社会保障を支える「次世代」も公共財ととらえれば、その育成のために企業は何ができるのかという問いを立てることができます。生物多様性は急速に失われつつありますが、それ以上に早いスピードで人間の文化の多様性も失われています。そのような問題群を通じて、人間と自然環境の相互関係を研究しています。

2.何を学んでほしいか

人間の知的活動の本質は、既存の問題に「いかに答えるか」ではなく、「いかにして『新たな問い』を見つけるか」にあると考えています。問題処理能力ではなく問題発見能力、これを身につけていただきたい。大学院はこの「問い」を見つける訓練の場であり、その答えをさがすための道具の使い方を習得する修行の場です。この道具とは、理論と方法論、そして個々の研究関心を大きな物語の中でとらえる科学的想像力です。問題意識を研究課題に転化し、計画的かつ体系的に情報を収集し、理論・仮説のもとに分析し、その結果を修士論文にまとめるという、一連の知的活動を通じて、さらなる「新たな問い」を見つけるスキルを学んでほしいと思います。

3.ゼミの紹介

人と自然環境の相互的な関係を社会学の立場から考察するのが大きなテーマです。その枠組みの中で、学生が選んだ研究課題に沿って、その研究をサポートする形で運営します。ゼミには3つの柱を立てました。一つは文献の輪読。これは修論研究に必要な基本的な文献を一緒に輪読するというもの。主に環境社会学に関する古典、社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)、ネットワーク理論、身体論などに関する文献を取り上げました。二つ目の柱は、方法論。受講者が抱える問題意識をいかにして「研究」として形作っていくか、その学術的な作法を学びます。研究を導く「問い」の立て方、研究対象の選択とアクセス可能性の検証、データ収集とその分析過程で直面する問題とその対処方法などを、学生のニーズに沿って学習します。三つめの柱は、共同体としてのゼミ。各自の研究を進める上でその直面する問題点をその都度分かち合い、その対処方法を一緒に議論しながら、互いから学び合います。受講生がプレイヤー、教員はコーチ。そんな形でチームを作っています。


ゼミの様子:様々なワークショップも行います



2020年のゼミ旅行