教員紹介

田中 嘉成

プロフィール

名古屋大学農学部卒。農学博士(名古屋大学、1991年)。日本学術振興会特別研究員(国立遺伝学研究所)、カナダNSERC (National Sciences and Engineering Research Council) 特別研究員(マックギル大学)、横浜国立大学客員助教授(1996年)、中央大学経済学助教授(2001年)、同教授(2002年)を経て、国立環境研究所環境リスク研究センター室長(2006年)。その間、生物の適応形質の遺伝変異、社会的コミュニケーションの進化理論、遺伝的要因や環境汚染による生物個体群の絶滅、化学物質の環境リスク評価手法に関する研究に携わった。2016年より、地球環境学研究科教授。

1.研究紹介

専門は生態学と環境毒性学。気候変動や環境汚染、外来種の侵入など様々な地球環境変化によって生物多様性や生態系がどのような影響を受けるかを、野外観測データと数理生態学モデルの手法を活用して研究してきました。横浜国立大学や国立環境研究所においては、化学物質などの人為的な環境かく乱要因がもたらす生物個体群の絶滅リスク評価に関する研究プロジェクトに参画、環境汚染の生態リスク評価の分野に生態学モデリングの手法を導入する研究で国際的にも先端的な成果を残しました。また、中央環境審議会化学物質審査小委員会委員や化学物質審査規制法検討会委員などを務め、化学物質管理の環境行政を支援するとともに、生態リスク評価手法の高度化に対して学術面から貢献する取り組みを続けています。

2.メッセージ

生物の多様性や化学物質の毒性に関係する自然科学分野から、環境リスク評価を介して環境政策に橋渡しをする活動を指針としています。特に、学際的な研究・教育活動を主な特色としています。実際、生態学と進化生物学、環境毒性学と生態学、数理生態学と環境リスク学など、関連異分野の境界領域で研究活動を続けてきました。環境学は、いくつもの分野を超えた連携によって初めて適切な解決を見出すことのできる複合的な領域です。本来の専門分野である生態学や生態毒性学で得られた知見や開発された手法が他の分野にどう波及し得るかを常に念頭に置いて活動していきたいと思います。

3.何が学べるか

生物学や生態学、環境化学の基礎知識、解析手法の基礎を学びます。これらの分野の予備知識は特に必要としません。生き物や自然生態系の保全に興味さえあれば、知識や理解を広め興味を更に深めるような指導をいたします。将来、環境問題の適切な解決に携わる人材として活躍することを見据えて、自然科学の側からの環境リテラシーの習得、つまり環境用語の正確な把握、環境プロセスに対する深い理解を目指します。環境関連文書の読解や執筆に必要な生態学・環境化学関連分野の基礎知識と基本概念を分かりやすく解説します。さらに、演習科目では、収集した環境情報をもとに客観的な判断を下すために必要な数理統計学やリスク解析学の解析手法の習得と、得られた解析結果を論理的に解釈し他者に説得するプレゼンテーション能力の訓練も行います。

4.ゼミの紹介

「学際的創造性」をモットーとします。異分野間の知的交流によって新しい知見が得られることを活動の指針といたします。研究のテーマは、エコロジー、生物多様性、環境汚染などに関連した課題の中から、学生が主体的に設定してください。研究内容として、特定の自然科学分野に捉われる必要はありません。研究テーマによっては外部の専門家(国立環境研究所等)からの指導や助言を仰ぐこともできます。研究科全体の講義や演習の内容を活用し、ゼミ生と教員を交えた建設的で創造的なディスカッションを通じて、文理融合的で学際的な成果を得ることを目指します。